蛍光バイオイメージング技術(FRET)を応用した、CML TKI治療前薬効診断法

慢性骨髄性白血病(CML)は、原因タンパク質BCR-ABLが
細胞内に出現し、発症する血液のがんです。
BCRーABLのチロシンキナーゼ活性を抑える分子標的治療薬(TKI)が
治療に用いられていますが、奏功する薬剤は実際に治療を開始し、
経過観察しないと判明しないことが課題となっています。
私どもは、BCR-ABLの基質CrkLと
フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)の原理を用いて、
BCR-ABLの活性を検出する「光診断薬」を開発しました。
実際に患者さんから採取したCML細胞がどのような
薬剤反応性を示すかを、治療開始前に、
一細胞レベルで解析することが可能です。

フェルスター共鳴エネルギー移動の原理とPickles

蛍  光:特定の波長の励起光により特定の波長の光放射
FRET:近傍に他の蛍光分子が存在すると、エネルギー移動で蛍光特性が変化
i.e. 色が変化して見える現象1 青色 黄色
光診断薬Pickles Pickles:Phosphorylation indicator of CrkL en substrate
 CrkLがリン酸化されていない=TKIが効いている → 青色、CrkLがリン酸化されている=TKIが効いていない → 黄色 青色 黄色

薬剤効果判定の手順

0日目

0.骨髄液採取

図:0.骨髄液採取

1日目

1.CML細胞単離(密度勾配遠心法)

図:1.CML細胞単離(密度勾配遠心法) 図:1.3 図:1.2

2.CML細胞への光診断薬Pickles導入(電気穿孔法)

図:2.CML細胞への光診断薬Pickles導入(電気穿孔法)1 図:2.2 図:2.3 図:2.4

2日目

3.薬剤(TKI)処理

図:3.薬剤(TKI)処理

4.撮像

図:4.撮像

3日目

5.画像解析

図:5.画像解析

6.薬剤効果判定

図:6.薬剤効果判定1 図:6.効かない 図:6.効く

予備臨床性能試験

1.初発時サンプルを用いた典型例
図:1.初発時サンプルを用いた典型例
2
図:2
いわゆるQuick responders(無治療寛解を得られうる患者)約50% 12,000人×0.5×250万円/年 = 150億円/年の医療費削減にも

蛍光バイオイメージング技術は、
生きた細胞内でのタンパク質の動きやはたらきを、
高感度かつ定量的に測定可能にします。
私たちはこの技術を臨床検査に応用することを
目指しています。